About this exhibition 本展について

ル・コルビュジエ 「ヴォワザン計画」図面の前で 1926年 ©FLC

世界遺産の国立西洋美術館で、「ル・コルビュジエ」の原点を観る。

20世紀建築の巨匠ル・コルビュジエ(1887-1965)が設計した国立西洋美術館本館は、2016年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。開館60周年を記念して開催される本展は、若きシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)が故郷のスイスを離れ、芸術の中心地パリで「ピュリスム(純粋主義)」の運動を推進した時代に焦点をあて、絵画、建築、都市計画、出版、インテリア・デザインなど多方面にわたった約10年間の活動を振り返ります。

第一次大戦の終結直後の1918年末、ジャンヌレと画家アメデ・オザンファンは、機械文明の進歩に対応した「構築と総合」の芸術を唱えるピュリスムの運動を始めました。そして、絵画制作に取り組みながら新しい建築の創造をめざしたジャンヌレは、1920年代パリの美術界の先端を行く芸術家たちとの交流から大きな糧を得て、近代建築の旗手「ル・コルビュジエ」へと生まれ変わります。

本展はル・コルビュジエと彼の友人たちの美術作品約100点に、建築模型、出版物、映像など多数の資料を加えて構成されます。ル・コルビュジエが世に出た時代の精神を、彼自身が作り出した世界遺産建築の中で体感できる、またとない機会となるでしょう。

【出品作家】シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)/アメデ・オザンファン/パブロ・ピカソ/ジョルジュ・ブラック/フェルナン・レジェ/フアン・グリス/アンリ・ローランス/ジャック・リプシッツ

国立西洋美術館 本館
撮影:新良太 ©国立西洋美術館

世界遺産をつくった巨匠 ル・コルビュジエ

20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエは、アメリカのフランク・ロイド・ライト、ドイツ出身のミース・ファン・デル・ローエと並び、「近代建築の三大巨匠」のひとりに数えられます。

スイスの高級時計の生産地ラ・ショー=ド=フォンに生まれ、当地の美術学校で学んだ後、ウィーン、パリ、ベルリンなどの諸都市で建築と美術の新しい動向に触れました。1917年からパリを拠点に定め、1930年にフランス国籍を得ています。1920年から「ル・コルビュジエ」の名で著述活動を行い、『建築をめざして』(1923年)をはじめとする数々の著作と建築作品により、近代建築の第一人者として国際的に注目されました。

「近代建築の5原則」や「モデュロール」など独自の理論によるル・コルビュジエの代表的な建築作品のうち、「ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸」(1923-25年、フランス パリ)、「サヴォワ邸」(1928-31年、フランス ポワシー)、「国立西洋美術館」(1955-59年、日本 東京)など7か国17資産からなる「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献」が、2016年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。

ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸 (1923-25年)
Photo Olivier Martin Gambier 2016 ©FLC

サヴォワ邸 (1928-31年)

ル・コルビュジエと国立西洋美術館 ―世界にたった3例の美術館

ル・コルビュジエの設計のもと、パリで彼に師事した前川國男、坂倉準三、吉阪隆正という3人の日本人建築家の協力により完成した国立西洋美術館本館は、所蔵品が増えるにつれて建物が中心から外へ螺旋状に拡張する「無限成長美術館」のコンセプトに基づいています。実現した例は、国立西洋美術館を含めて世界に3つしかありません(ほか2館はインドのアーメダバードとチャンディガールに建設)。

ル・コルビュジエは、日本の新しい美術館のコレクションが19世紀の印象派から20世紀の美術へ、さらに未来へと発展することを想定して、「無限成長」の基点である建物中央の吹抜け空間を「19世紀ホール」と名づけました。現在、この建物(本館)は中世末期から18世紀までの西洋美術作品の常設展示に使われていますが、ル・コルビュジエの意図は「近代の精神を集約し普及する拠点」としての美術館を作ることだったのです。今回の展覧会は、ル・コルビュジエの設計によるこの本館の中に、彼自身の多様なジャンルの作品と同時代の先端的な芸術家たちの絵画・彫刻を展示し、彼が提唱し続けた「近代の精神」をよみがえらせます。

ル・コルビュジエ 国立西洋美術館の模型の前で 1956年頃
©国立西洋美術館

国立西洋美術館 本館 19世紀ホール
©国立西洋美術館